前接語

ふとタガログ語の語順が気になって前接語というものを調べてみました。

参考

前接語

前接語前節語(enclitic)は、文の2番目に来る単語のことです。Ang形とNg形の人称代名詞(personal pronouns)と小辞(particles)が前節語です。

  • 前接語(enclitic)
    • 人称代名詞(personal pronouns) : ako, ka….、ko,mo….. その他多数
    • 小辞(particles) : na, pa, man…. その他多数

前接語の例

例えば以下のように前接語は文の2番目に入ってきます。

walang pera .お金がない

↓ + ka (ang形の人称代名詞)

wala kang pera. 君はお金を持っていない

↓ + na (短い小辞)

wala ka nang pera. 君は今お金をもっていない

↓ + yata (長めの小辞)

wala ka na yatang pera. 君は今お金をもっていないようだね

wala についてたリンカー(ng)が、前接語が入ることで、後ろ、動詞の前にズレていっているのがわかります。

順番

前接語には順番があり、以下のような順序になっています。

Order of Tagalog Enclitic Words

グループ分けするとこんな感じのようです。だいたい短いのが先、長いのが後に来ます。

  • 優先度1 ka, ko, mo (人称代名詞で一音節のもの)
  • 優先度2 小辞
  • 優先度3 Ng形人称代名詞
  • 優先度4 Ang形人称代名詞 

kumusta ka na ?

表で kaは1番の優先度、naは2番目の優先度なので ka na の順番になります。(なお表で同じ優先度の場合は、概ね単語の並んでる順、上から下の順番になるようです。例、na lang、na ba)

kumusta na kayo?

表で naは2番目の優先度、kayoは4番目の優先度なので na kayo の順番になります。

この表を記憶して瞬時に文を組み立てるのは普通の人には無理だと思うので、文を何度も何度も見聞きするうちになんとなく自然な順番というのを身につけていくことになります。

前接語の語順の身につけ方

  • 短いのが前
  • たくさん見聞きして真似する

その他

指示代名詞は前接語でない

これモヤモヤしていたのですが、指示代名詞は前接語でないようで、2番目に来ないんですね。

  • wala akong pera. 僕はお金を持っていない
  • walang pera iyon. それ(あの人)はお金を持っていない
  • (△不自然) wala iyong pera.

Learning Tagalogの動画でも前接語でない例で”Walang bisikleta iyon”という例がありました。

例(↓この記事を調べるきっかけになった文)

人称代名詞、指示代名詞 前接語は”人称代名詞のAngとNg形”。指示代名詞(ito/iyan/iyon)は前接語ではないようです

wala itong pera ?

itoは指示代名詞なので前接語ではないと思いますが・・・

私の家庭教師のChatGPT先生にwala itong peraという表現について聞いてみたところ、”自然なタガログ語で問題ない”という回答をもらいました。

ログ https://chat.openai.com/share/9322a985-08e6-45b3-96ee-b14f4ded5657

また、”wala itong pera”でぐぐると、2600件ですがヒットします(一方”walang pera ito”は5280件)。たぶん文法的に誤りだとは思うのですが、言いやすいので言ってしまう人がいるような感じでしょうか?

追記:指示代名詞も人称代名詞のように2番目に来る場合もあるらしい

  • 参考 大学のフィリピン語 P47 基本文①における指示代名詞の位置, P69 否定文/主語が指示代名詞の場合

小辞≠enclitic

タガログ語の小辞を英語でencliticと言うのかとなんとなく思ってましたが、小辞はenclitic particlesと言うようでした・・・ずっと間違えてた、テヘ。

enclitic《文法》〔それ自身には強勢(アクセント)がなく、その前の語に続けて発音される語のこと。例えば、「Yes, Sir.」のSir、「I’ll」のll、「cannot」のnot。〕

英辞郎 – 前接語

ちなみにencliticの逆はproclitic(後接語)らしいです。

前接語が2番目に来ない場合

参考 16 Enclitic words: Special cases

前節語が2番目に来れないパターンがあります。

代表的な例ではang, ng, saなどマーカーの後には来ません。

  • Sa akin ba ito? これは僕の?
  • (×誤り) Sa ba akin ito?

他によく使う例では may です。mayの直後には前節語が来ません。

  • May pera ka ba?
  • (×誤り)May ka ba pera?

一方、mayroon、walaなどは前節語が2番目に来ます。私がタガログ語を勉強しはじめたとき、存在や所有を表す例で最初にmayを習って、次にmayroon、walaを習ったので、mayが基本で他が特殊なパターンかとずっと思っていたのですが、むしろ他が標準(他の形容詞が先頭に来る語順と同様)で、mayの方が特殊だったんですね~。

他の例は以下に一覧されています(たくさんあります)。

Learning Tagalog – Exceptions to the Follow-the-first-word Rule

前接語が2番目に来たり来なかったりする場合

“baka, bakit…”などの後は前接語が2番目に来る場合もあるし来ない場合もあるらしいです。上記Learning Tagalogの “3. Enclitic words may, but do not have to, immediately follow the words below.”参照

  • bakit nandito ka? (Arkin)
    • 前接語は2番目ルールだと bakit ka nandito となる (bakitの場合、どちらも語順もあるぽい)

その他の前接語例外の例外?

  • Imbis kasi na itabi namin yung pekeng pera… 私たちはだってその偽札を取っておく代わりに (Yogiart)

疑問詞 + 名詞の場合は?

2番目に来れないパターンの原因の一つは、なんとなく結びつきが強い言葉の間には割って入れない風です。例えば人の名字の間には割って入れません。

  • Tom Cruise ba siya? 彼はトム・クルーズ?
  • (誤り) Tom ba siya Cruise?

ただ普通の複合名詞の間には割って入ります↓

  • Magandang babae ba siya? 彼女は美しい女性ですか?
  • Maganda ba siyang babae?

(この場合、どちらでもOK? TODO)

一部の、疑問詞+名詞の間にも割って入らない感じがします。

例えば、Ilang taon (何歳) ?の間には入らないと思います。

  • Ilang taon ka na? 何歳ですか?
  • (誤り) Ilang ka na taon?

一方、Anong kulay (何色)?の間には割って入るようです。

  • Ano bang kulay ang gusto mo? 何色が好き?
  • Anong kulay ba ang gusto mo? ←これもOK?

2カ月前に変に悩んだ文がありましたが、この”何色”の何と色の間にbaが入るのがしっくりこなかったのが一つの原因だと思います →ano bang kasungitan iyan? (ano bang)

Gaano katagal (どれだけ長く)? の間にも割って入るようです。

  • gaano ka na katagal sa Manila? マニラには今どれくらいいるの?
  • gaano katagal ka na sa Manila? ←これもOK?

ng句でも前節語ルールが適用される

以下のような短い文でも前節語ルールが適用されるようです。A ng BのAとBの間に代名詞が割って入るのは混乱しがちです (TODO ネイティブ確認、適用されない言い方も可?)

  • Ate siya ni Ann. 彼女はアンの姉だ ← Ate ni Ann siya

なお、前節語Xは “A X ng B”という位置には来ますが “A ng X B / ng X A B”とngの後には来ません(上記”前接語が2番目に来ない場合”参照)。(保留、例?)

  • kasalanan ito niyon. これはあれのせいだ(Can’t Buy Me Love) ← kasalanan niyon ito

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